生来の収集癖が高じてこんなサイトまで立ち上げたのである。ギターも、数だけはそれなりに多い。
そう、数だけはね。そのかわりと言ってはなんだが、一本当たりの価格は知れている。普通の勤め人、
しかも所帯持ちで旧車2台と暮らしてんだからあたりまえの話だが、それ故、入手したギターには、
どこかしら手をかけてやらねばならないケースが少なくない。逆に言えば、それをも楽しめるからこそ
ここまで続いてきたのだ。落ちたインレイの修復、電気関係の修理等は、慣れてしまえば素人の自分
にも、さして困難な作業ではない。だが一つだけ、フレット交換だけはどうしても手を出す気になれない。
理由は二つ。一つは面倒くさいから。元のフレットを抜き、新しいフレットを切断/調整し、打ち込み、
そして擦り合わせをする。大雑把に言ってもこれだけの作業があるわけで、とてもじゃないがそこまで
やっている時間は持ち合わせていない。それこそ、ギター弾く時間が無くなっちまう。
二つ目の理由は、物がフレットという、出音と演奏性に直接影響する部分だから。音程の狂ったギター
なんて、どうやったって弾き難い。交換工賃をケチった為に弾けないギターになってしまったなんて、
本末転倒もいいところだ。しかも手間と時間をかけた挙句に、である。(工具代だっって掛かるんだし。)
一方でこれまでのリペア料金と作業日数相場はといえば、最低でも3万円以上/2−3週間程度かかる
というのも事実。良く使うギターだからこそフレットが減るのに3週間も使えないの?39,800円で
買った中古ギターに同じ額の費用を掛けなきゃいけないの?自分以外にもそう思った人は多いはずだ。
ところが、逆に「交換費用1万円から!」などと聞くと、今度は仕上がりが心配で頼めないという連中も
多いようで、あちこちの相談板に「大丈夫でしょうか?」と問う書き込みが後を絶たない。
そんな質問に対する俺の答えは「あなたが満足する仕上がりかどうかは、私にはわかりません。」だ。
あたりまえぢゃんね。ちょっとは自分でリスクを負ってみなさいよ。それが嫌なら普通のショップに
リペアに出すの。頼む以上は「自己責任」ってやつね。
「ところで、あんたはどうなんだ」って?使ってますよ。格安サービス。自分で頼んでみて、疑問点を
直接問い合わせれば、いろいろわかることもあるし、何より却ってきたギターがすべてを語る。
今のところ一社にしかお願いしてませんが、ローズ指板のもの4本&メイプル1本、特に問題もなく
作業を完了してます。ただし、メイプル指板は、打ち換えに伴う再塗装はされていない。
実はこの辺が安値の理由でもあるのだ。店舗を持たない、従業員を雇わず万事一人でこなす、などと
いうことに加え、「やらずに済む仕事はしない」というのが、格安作業の肝だったりする。
「しないで済む仕事はしない」とはどういうことか。例えば、修正を必要としない状態であれば、指板
修正はしない。今付いているナットがそのまま使えるのなら、交換はしない。そういうことだ。
今回お願いしたリペアマンの仕事ぶりがwebで確認できるが、フレットエッジド・バインディングの
ギターをこの価格で彼がリフレットする場合、エッジに繋がるバインディング部分を落としてしまい、
そのままオーバーバインディング仕様で打ち換えられて帰ってくる。1万4千円でバインディングまで
修復するのは無理だからなのか、そこまでの技術は持ち合わせていないからなのか知らないけれど、
それをやらないから1万4千円なのは間違いない。
勿論、このようなケースで大事なのが「コンセンサス」だ。フレットエッジのバインディングを落とすなんて
ケースでは、事前に双方が合意しておかないと、後でえらいことになる。要するに仕事の内容と支払う
金額、そしてフレット交換をしようとするギターの自分にとっての価値を秤にかけて判断するしかない、
ってこと。俺だって、例えば こいつ のリフレットを1万円でお願い
するかと聞かれたら、答えは即答で 「NO」だ。誰に任せるにしても、じっくり時間と費用を掛けて、
最善と思われる方法でお願いするに 決まっている。
安く済むには理由がある。それを理解した上でうまくお付き合いできれば、格安フレット交換も、全然
「アリ」ってことですな。(ただし、OWN RISKでね。わしゃ、他人の事までは感知しません。)
2010年12月28日
|