Orville 並びに Orville by Gibson に関する情報は、その正確性と質において正に玉石混合状態とはいえ、
ネット上にあまた存在する。邪推、希望的観測、思い込み。そういったもので彩どられた情報をいちいち
検証していくつもりは毛頭ないし、そういう作業はそれを得意とする方に委ねればよい。
ただ、「流石にこれはどうかと思うよ」という現象についてだけは、ここに自己の認識を記しておこう。
Orville / by Gibson を説明した表現の中で、自分が一番妥当と思っているのは、「ギブソン版フェンダー
ジャパン」というやつだ。勿論、何から何まで一緒というわけではないが、情況を最もシンプルに表して
いる表現だと思う。と同時に、この言葉がそのまま、製品の性格/特徴を体現しているとも思う。
一方で、他社製品、特に本家 Gibson USA との不毛な比較論争は後を絶たない。まぁ、暇つぶしには調度
良いのかもしれないが、往々にして比較対象の大前提となるべき「比較基準の統一」がなされないまま、
終わりの見えない議論に終始している。
例えば「下手な Gibson より作りがいい」といった評価がそれだ。もし誰かに「あなたはこの点について
どう思うか」と尋ねられたならば、自分には「正解とも言えるし間違いとも言える」としか答えようがない。
もし質問が、「1990年頃(ヒスコレ以前)の本家レギューラーレスポールとby Gibson のLPS/FM
とではどちらが作りがよいか」というものであれば、「実勢価格を考えれば後者だろう」と答えることが
可能なのだが。ましてや、「ロングテノンかどうか」が「作りの善し悪し」とごっちゃにされてしまったり、
更には「良い音がするのはどちらか」などという、人/情況によって判断基準がまったくバラバラな話まで
持ち出して「どっち?論争」を始められてしまうと、これはもう時間の無駄遣いにしかならない。
経験上、Orville と Orville by Gibson の違いは、単に搭載するPUの違いだけではないと考えている。
しかしそれとて、その最後期の製品には当てはまらないケースが多い。同じモデルでも製造業者によって
仕様が異なることもあり、単純に「このモデルがいくらならお買い得」などとはとても言えないことを思えば
このところの中古相場は、ファンである自分の目から見ても「異常」だと思うし、プロアマ問わず、そこには
「儲けたい」という売主の思惑が見え隠れする。
フェンダージャパンとて、スタート当初のスタンスは「正式ライセンス生産により、本家USA物に出来るだけ
近いクオリティのものをより廉価で」というものだった。そしてその製品は「本家から詳細な情報提供を受けて
作られた、より本家に近いGreco」として、アマチュアギタリストの大いなる手助けとなった。同じことが
Orville by Gibson にも言えはしないだろうか?そのコピー度に定評のあるGrecoのレスポールに、本家
ギブソン製のPUを乗せたものがリーズナブルな価格で手に入ったのなら、文句はないはずだ。それでもまだ
値段が高くて手が出せないという人には、フェンダージャパンにスクワイア(JVじゃないヤツ、ね)が存在
したように、「by Gibson」のつかない Orville という選択肢がある。
このように考えると、一部のオーダー品や限定生産品以外の Orville by Gibson 製品の中古価格は、Greco
の中古品相場にピックアップ代金を上乗せしたくらいの額が妥当だろうと思うのだ。そして、トーカイ製MIJ
のようにお宝扱いされるより、アマチュアミュージシャンの助けとして現場へ持ち出してもらう。それこそが、
本来のブランドコンセプトに見合った姿ではないだろうか。
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