FREE

ファイヤー&ウォーター ハードブレイカー フリー&バドカンベスト


1968年、かのアレクシス・コーナーによりフリーと名付けられたバンドが、ファースト・ギグ、ファースト・アルバム
レコーディングと、初めてづくしを連発しながらデヴューに向かって進んでいた頃、バンドのヴォーカリスト/ポール
ロジャーズとドラマ―/サイモン・カークは18歳、ギタリスト/ポール・コゾフが17歳、そしてベーシスト/アンディ
フレイザーに至っては若干15歳だったというのだから、当時の社会常識から考えれば、「ジャニーズも真っ青」
状態である。(ワカイッテスバラシイ?)

しかしこの若さが後のバンド活動に暗い影を落としていくわけで。Tons Of Sobs/Free/Fire And Water と、3枚目までは 破竹の勢いであった彼らも、自信作であり、且つ前評判の高かった4枚目、Highway のセールスが不振に
終わったあたりから様子がおかしくなる。セールス不振に加え、ロジャースとフレイザーの不仲、コゾフの薬物中毒
といったトラブルにより、1970年には一度目の(!)解散をする。レコード会社側は苦肉の策でライブ盤を発売、
その間に頭を冷やしたか、あるいはライブ盤の売れ行きに気を取り直したのか、1972年になんとか再結成。
(レコーディング活動に入ることでコゾフを立ち直らせたいという意図もあったようだね。) 5枚目のアルバム、
Free At Last (「やっと自由になれた」って...)を発表するが、結局コゾフがあてにならないということで、年内に
フレイザーが脱退。残ったメンバーは、かの日本人ベーシスト/クマ・原田氏...   ぢゃなくて、山内テツ氏と
キーボードのジョン・“ラビット”(でかい前歯)・バンドリックを迎え、6枚目にしてバンド最後のアルバムとなる
Heartbreaker を発表するも、ロジャースとサイモン・カークがバドカンを結成したことにより、翌年事実上2度目の
解散。

それでも仲間ってのはいいもんで、1975年、健康状態に改善の見られたコゾフにバドカンの二人が声をかけ、
彼のセカンドソロアルバム "Back Street Crawler's" サポートライブとして、バドカンの前座公演をセットする。
コゾフも旧友の申し出に大いに喜び、バドカンとのツアーを楽しみにしていたようだが、翌1976年4月25日に
予定されていた初日を待たずして、同年3月19日、ロスからニューヨークへ向かう機内で絶命した。(ドラッグに
起因する心臓発作が原因と言われている。)

一方のアンディ・フレイザーも、ここでもロジャーズの助けがあったのか、1994年にウェンブリーで行われた
「ギブソンギター100周年記念コンサート - The Night of 100 Guitars - 」に登場するも、ヘロヘロの状態で
All Right Now を演奏し、よりによって間奏のベースリフを間違えるといった大失態を演じ、更に2005年には
「エイズで死亡」といった怪情報(実際にHIV感染はしているものの存命)が飛び交うなど、お世辞にも好調とは
言えないその後だったようだ。

あんまり早いうちから大人社会に首突っ込むのもどうかと思うよね、ってところであるか?

とはいえ、彼らの残した楽曲がロック界に残した影響は確たるものがある。その証拠ともいえるのが、数多くの
カバーヴァージョンの存在だ。一例を以下に抜粋しておく。

All Right Now : Rod Stewart / The Runaways (!) / Brian May
Fire And Water : Great White / Wilson Pickett
I'm A Mover : Iron Maden
Little Bit Of Love : Def Leppard
Mr. Big : Mr. Big / Gov't Mule
My Brother Jake : Thunder / Superfly
Ride On A Pony : The Black Crows
The Stealer : Bob Seger / The Faces
Walk In My Way : "Screamin'" Joe Bonamassa
Wishing Well : Pearl Jam / Blackfoot / Gary Moore / Gov't Mule / Joe Lynn Tuner (ex. Raibow) / Styx


FREE のようなバンドの場合、特にギターソロのバックで音が薄くなるのは致し方ない。当人たちもそれを補うべく
Fire and Water のギターソロ部分では、フレイザーがベースでコード弾きをしていたりする。しかしながらコゾフの
「中気ヴィヴラート」は、その弱点を補って余りあるキャラクターとなっているし、同様に彼の「顔ギター」も強力だ。
一方で、アルバム Fire & Waer で聞ける Mr. Big などは、その「隙間感」を逆手にとってうまく料理した良い例かも
しれないと思わせ、かと思えばラストアルバム Heartbreaker 収録の Wishing Well では、ピアノ/ベース/ドラム
それぞれがその隙間を埋めることで、絶妙の緊張感を演出している。このあたりのアプローチの変遷、なにか
メンバーの音楽的成長とシンクロしているような気がしないでもない。


さて、「コゾフといえばレスポール」であるけれど、初期にはBBカスタムも弾いてたんですな。ワイト島フェスで 弾いている奴が、TV出演時に弾いている奴のトップ塗装を剥いだものなのかどうかはしりません。個人的にはこの
CSBの色合いは何となく70年代っぽい感じがするのですが、いずれにしても、近年GIBSON社より発売された
シグネイチャーモデルは細めのトラが入ったレモンドロップ。

このギターをパッと見て、コゾフは連想しないんですけどね、わたし。(むしろゲイリー・ムーア...)





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